株式会社ボォワル様
人の心を捉え動かすビジュアル表現にこだわりを持つアマナグループでは、2006年1月にオープンした「海岸スタジオ」での俯瞰撮影用に高所作業車を購入した。
その活用の仕方、現場からの評価などを株式会社アマナ ビジュアル制作本部制作運営部マネジャー楢木野脩氏、同部 小野崎智美氏、株式会社ボォワル フォトグラファー 西村恵氏に詳しくお話を伺った。
アマナグループの業態
本日は導入して2年が経った高所作業車についてお話を伺います。まずアマナグループについてご紹介をお願いします
アマナグループは、広告、出版、Webなどで使用される写真やCG(コンピューターグラフィック)、動画などのビジュアルコンテンツを創造・提供し、ビジュアルコミュニケーションを総合的にサポートする21社からなる企業グループです。
アマナホールディングスを主軸に、アマナを中核事業グループ会社としたビジュアルコンテンツの企画制作事業グループと、アマナイメージズを中核事業グループとしたストックフォト企画販売事業グループにより構成され、日々お客様が伝えたいメッセージをビジュアルで伝わるようにお手伝いしています。
グループを構成する21社には撮影を中心とするビジュアル制作会社8社があり、現在61名のフォトグラファーがおります。この8社はそれぞれに個性や強みが違い、互いに切磋琢磨しながら、表現力を高めていく環境が整っています。
2006年1月にホスピタリティを追求するとともに、情報の安全に配慮し、ビジュアルの質を高めるためのデジタル環境を実現した国内最高レベルのグループ専用スタジオ「海岸スタジオ」をオープンし、同年5月に俯瞰撮影用として高所作業車を購入しました。
撮影用に高所作業車「MB20」を購入~他にないデザインが印象的だった
購入した高所作業車について教えてください
導入した高所作業車は「MB20」で、バッテリーで動きます。
作業車のゴンドラの床にカメラでのぞけるような開口部を作っていただきました。
※MB20 仕様
全幅 0.81m 全高 1.98m 全長 2.43m
重量 2570kg
最大作業高 8.0m
張出し長さ 2.6m
特長 幅が狭いのに横に張り出すことができる(360° マスト旋回)
俯瞰撮影用に購入した「MB20」
「MB20」を購入することになった経緯についてお聞かせください
このスタジオを設計するにあたっていろんな貸しスタジオなどを見て回ったんです。
そのうちの一箇所に snorkel社のパンタグラフ式(シザース式)の真上に上がる高所作業車がありました。
それは今まで見た工事現場にあるような高所作業車と違い、上品なブルーの車体に白い文字で「snorkel」と書いてありました。
しかもタイヤの色は白で、「これなら床が汚れなくていいね」と日ごろから、こまかい点にもこだわるフォトグラファーたちからも好評だったので、強い印象がありました。
一方、この「海岸スタジオ」には、当初は俯瞰ピット(※1)の設置を検討しましたが、消防法の関係などで二層式にできないなど制約がありました。
また、スタジオには天井高が必要なことから倉庫をコンバージョンしています。
そのため、電球の交換をはじめ、配線の工事・点検など高所での作業がさまざまに生じます。
こうしたことから、俯瞰撮影においても、設備管理においても、作業の効率化を図るために高所作業車を導入することにしました。
snorkel 社のホームページを見たところ、乗用タイプでジョイスティックで動くタイプのものが、デザインも使い勝手も最適ではないかということになり、問い合わせをして話を聞いたり見せてもらったりして導入にいたりました。
決定のポイントはデザインですか
私たちは常に、ビジュアルを通じて感動を提供する仕事を目指しています。そのため、空間や設備も、お客様の期待を裏切らないものでなければならないと考えているので、デザイン性の高さは重要でした。
お客様というのは
お客様とは、広告代理店や広告制作会社の営業、アートディレクター、デザイナーを中心に、あらゆる企業のビジュアル制作に携わる方々です。お客様が撮影に立ち会うことも少なくありません。
導入時にどこか比べたものはありますか
建築作業車というイメージのものしかなかったので、比べようがありませんでした。「他にあるかもしれない」とは思いましたが見つけられませんでした。
※1 俯瞰ピット
被写体を真上から撮影するために、中二階のように二層式にして、
上部の床に開口部が切り込んであり、被写体の真上から撮影できるようにつくった造作。
「MB20」をどのように使っているか~俯瞰撮影で使用
「MB20」はどのように使用しているのでしょうか
俯瞰撮影の時に使用していますが、フォトグラファーの指示のもと、アシスタント・フォトグラファーが「MB20」とカメラの操作をし、バスケットの床につくった開口部からカメラで覗いて被写体を撮影します。
デジタルカメラで撮影した画像を、パソコンのモニターで確認しながらその場でデザイナーが指示を出すこともできます。
今まではファインダーを覗いているカメラマンにしかわからなかったことが、制作スタッフ全員でリアルタイムに共有できます。
撮影現場にはどういう人がいるんですか
主にフォトグラファーとアシスタント・フォトグラファー、最近では、撮影現場で仕上がりの画像イメージを確認するために、合成やレイアウトなどのデジタル画像制作を行うCGクリエイターも加わり、3人1組で構成されることが多いです。
お客様の立ち会いがある場合は、かなりの人数になることもあります。
高所作業車の操作はどうやって覚えたのですか
snorkel社へ講習に行ってライセンスを取りました。フォトグラファーとアシスタント・フォトグラファーの半分は操作ができます。順次講習を受けているため、今では50名以上はライセンスを持っています。
「MB20」を導入する前はどうしていたか
「MB20」を導入するまでの何ヶ月間かは俯瞰撮影はどのようにしたのでしょうか
高所作業車を購入する前は、大掛かりなものになると、レンタルの高所作業車を使ったり、イントレ(※2)を組んだり、あるいは俯瞰撮影ができるスタジオを借りたりしていました。
翌日の撮影が俯瞰撮影になることや、撮影するモノが当日になって手元に届き、モノを確認してから急遽俯瞰撮影になることもあります。
このような急なスケジュールに対応することはとても大変です。また、撮影する5カットのうちの1カットだけを俯瞰で撮影するということもあり、しかも、自社にこれだけスタジオがあるのに、他でスタジオを借りる必要もないわけで、「MB20」を導入してからは、いつでも必要な時に俯瞰撮影が行えるようになり、どんな撮影においても安心してクリエイティブに専念することができています。
※2 イントレ
建築現場で目にするような鉄製パイプを使った組み立て式の足場。
「イントレ」という呼び名は1916年のアメリカ映画「イントレランス」からきたものと言われている。
俯瞰撮影機材として「MB20」を評価すると~現場での感想
「MB20」を2年間使用された評価をお聞かせください
まず、撮影する場所の微調整が利くのでいいですね。俯瞰ピットのように作りつけだと、固定なので被写体の方を動かさないとならない。
高所作業車は撮影する側が動けばいいので制約がなくていいです。
お客様の受けもいいです。
開口一番「おお!」と驚かれ、次に「へえ、こんなタイプがあるんだ」や「かっこいい」と続き、少しリラックスしたコミュニケーションのきっかけにもなります。
アマナグループの人たちは、何に対してもそうですが、とてもこだわるため、お客様からの評判でも、自分自身の好みや使い勝手でも、クレームがあればとてもうるさい会社なんです。
その会社で、「MB20」に今だかつてクレームを言ってくる人がいないということは、「素晴らしく評価をもらっている」ということだと受けとめています。
故障のリスクはもともと覚悟していましたけれど、思ったほど故障はないし、
バッテリー上がりもほぼありません。
メンテナンスについて~どんなことに注意をしているか
メンテナンスはどのようにしていますか
「MB20」のメンテナンスは、スタジオスケジュールと撮影機材の管理をしている制作運営部が担当しています。
使用予定の前日には充電をして、月1回の簡単な点検もやっています。
メンテナンス面で一番困ったことはなんですか
撮影は土日祭日や夜間も行われます。
休日でメンテナンス担当者が休みの時に「MB20」ががスタジオ内で止まったことがありました。
翌日の撮影スケジュールがあるのに、スタジオ内で動かせなくなってしまいました。
月曜になって大至急メンテナンスに来てもらいましたが、その後休日対応ができるような体制をつくりました。この経験もあり、月1回のメンテナンスや日常の動作確認、バッテリーの容量確認が大事だとわかり、今では「月1メンテ」を行っています。
「MB20」を担当する制作運営部小野崎智美氏
今後の期待
高所作業車およびsnorkelへの今後の期待をお聞かせください
今後の期待ということでは今の段階で2つあります。
カメラだけを乗せて遠隔で操作できたり、位置を記憶させることができる高所作業車があったら、アングルを検討する際など、効率化が図れるほか、長時間の撮影にも対応できるので、実現したら本気で導入したいと考えていることが1つ。
もう1つは、動画の撮影の需要も高まりつつあるので、高所作業車には俯瞰での撮影だけではない、さまざまな用途が出てくるでしょう。よりスムーズに自由自在な動きが可能になるといいかもしれないですね。snorkel社のおしゃれな高所作業車には今後も期待しています。
お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。